こんにちは。スタイリストの岡田です。
先日お伝えしたとおり、オカダは9月30日でお世話になったteetaを離れます。
色んな方に色々なお言葉を頂きまして感謝しています。お言葉の中には、無責任だと厳しいお言葉もありますし、応援して頂いたり、アドバイスやご忠告を頂き、それも全て真摯に受け止めて日々過ごしております。
同時に過ごしていく中で僕が思うこともありますし、自分自身の中での美容師としての在り方みたいなものも感じる部分があったので、忘れないようにここに書き残しておこうと思います。備忘録、感じるままに。
うまくなりたいだけじゃだめなんだ
僕は美容師になって今年で12年が経ちます。
美容師を目指して栃木県の田舎から上京してきたのはもっと前になります。「初心」というのでしょうか。この12年、振り返ると色々なことがありましたが、自分の中で12年間思い続けてきたことがありました。
自分自身、過去を振り返ることは今の歩みを止めてしまうように思えてあまり好きではないですが、美容師になって12年経った今のタイミングでも自分の中の真ん中にある思いというのは変わりません。
美容師として「うまくなりたい」という思い。それはずっと変わらずに自分の中に在ります。
アシスタントのころはただがむしゃらに、それこそわき目も振らず美容のことだけを24時間考えて生きてこれたけど、
それから12年経った今では、人生の中で他に考えることが多すぎてもどかしく思えます。
生きていくには美容師として「うまくなりたい」その気持ちだけでは生きていけないのかもしれません。
ただ、環境が変わっても、歳を取っても、自分の中で変わらない部分もあり、ただ、環境が変わって、歳をとって、変わっていくものもありました。そんな話をすこしばかり。
「うまい」という言葉の意味
「うまい美容師」って何でしょう?
技術が上手なことでしょうか?1mm違わずきれいに切れることでしょうか。
それとも接客が上手なことでしょうか?
それとも、人の気持ちを分かることが上手なことでしょうか?
どれも大事だと思うし、いまだに僕に正解は分かりません。それぞれの「人」に正解があるんだと思います。
美容師の数だけ「上手い美容師」の正解はあるし、お客様の数だけ「上手い美容師」の正解があるのかもしれません。今はそう思っています。
美容師になった当時の僕は、コンテストに入賞するような美容師は「上手い」んだと思っていました。独創的で斬新な髪型を作れる「センス」がすごいなと思ってました。
だから上手くなってコンテストに入賞しようと思い、一生懸命練習してチャレンジして、大きめな大会でも入賞できるくらいまでなりました。(その何倍も失敗しましたけどね)
その結果、サロンの中の大事な仕事を任せて貰えたこともありました。出たかった雑誌の誌面にも載せてもらうことが出来ました。すごく嬉しかった。
それでも、自分が「上手い美容師」だなって思ったことはありませんでした。周りにはもっと沢山すごい人ばかりでした。
(実際、そういったコンテストで結果が出せたのは、僕だけの力ではなくて、モデルさんをはじめ周りの人に恵まれて、運が良かっただけだと思ってます。本当に、感謝しています。)
コンテストで入賞しても、雑誌に載っても、自分が目指していた美容師の理想をひとつずつ叶えていっても満たされなかった。
ただ、美容師になりたての頃の自分の承認欲求と自己顕示欲を満たすだけならばその結果はそれで十分かもしれません。ただ、そのころの僕は20歳の僕とは違って、ある程度経験を積んで歳を取っていました。なんか想像してたのと違うなと思いました。
その頃からか、ただ漠然に「上手さ」を目指すのは辞めました。
ただがむしゃらにデザイン力やテクニックを追うことはひとまず横に置きました。(もちろん、今でもデザインやテクニックは大事だと思っています)
ただ、それは歳を重ねるごとに自分の中の「上手い」という言葉の意味が変わってきたというサインなんだと感じました。
お客様にとって自分が役に立てる美容師であるために
今の自分の中では、自分の目指している「上手い美容師」というのは、あまりうまくいえないけど、言葉にするとたぶん、周りの人を「幸せに出来る」とか、「役に立てる」とか、そういった意味合いが強くあります。
ただ、髪をキレイに切るのなら、美容師なら誰にだって出来る。
ただ、髪をきれいに染めるなら、美容師なら誰にだって出来ます。
たぶん、ある程度経験のある美容師さんなら、技術はあると思います。今の時代なら言われたとおりにカットするだけなら1000円カットでも事足りてしまうと思います。
そんな時代に自分が美容師をしている意味。
そして、
今の情報過多の時代で、美容師は自分がここにいることをお客様に知られなければ意味がない。と思っていますし、知られる為に「SNSやらなきゃ」とか、「ブログ書かなきゃ」とか、思って一応やってますけど、
そんな時代にただもっと「上手くなりたい」と思うことは、おかしいことでしょうか?ただもっと「上手くなりたい」だけじゃいけないのかな?て心のどっかで思ってます。
現代のSNS時代では、「ヘアスタイル」より「ヘアデザイン」より何より先に何人フォロワーがいるとか、いくつPVがあるとか、「有名であること」が良しとされて、「技術」とか「デザイン」とかの「本質」みたいなものの低下が叫ばれてるけど、
負け惜しみかもしれないけど僕は自分が有名になりたくて美容師になったわけじゃないんだ。それに数年前に気付いたんだよ。僕がいま美容師してる本質っていうものか、軸というものなのかわからないけど、僕にとって大切なものが。
僕はただ、ただ美容が好きで、髪を切ることが好きで、
僕が髪を切ることで変わる人生を沢山作りたくて、
僕が髪を切ることで笑顔になれる人を増やしたくて
僕はそんな僕の大切な人たちの役に立つことではじめて幸せになれる。
たぶんそれが今の僕の美容師としての「本質」の部分だと感じています。
今僕が、いまでも「うまくなりたい」と願うのは、20歳の頃の僕たちが大人になっても色んな人生を歩んでいっても、変わらない大切な人のために、そんな人たちの役に立ちたいから。
時代が変わっても、歳をとっても、自分がその人を幸せに出来る一番の美容師でありたいから。
僕の大切な人たちに子供が生まれて、僕がその人の子供の髪を切って、子供が喜ぶ姿を見て大切な人の人生にまたひとつ幸せが生まれる。そんな幸せを繋ぐ力が美容師にはあるんだよね。
だから僕はもっとうまくならなきゃいけない、というか昨日より今日うまくなってたい。
大切な人のこどもが大きくなって、色気付いた年頃になっても、僕に髪を切らせてよ。他に行くなよ。ていうと思う。
「ダセー」っていわせねーしイケてるヘアスタイル作ったるわ!って思ってるから。
そんな風にしてたぶんこれからも美容師してる限り、僕は「うまくなりたい」と思ってるんだろうな、と。
そうであって欲しいなという願望も含めて。
ほとんど願望かな。
まぁそれも良いでしょう。
それでは。
オカダ アキヒロ


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