「私は美容院に行くのが大嫌いである。」
その一文から始まった深夜のSNSの友人の投稿に、美容師の僕は目を止めて見てしまった。半分寝てたけど3/4は目が覚めたよ。
その友人とは高校の頃の友達で、卒業以来会っていない。クラスも違えば、そういえば授業も一緒に受けた事もなかったけど。彼女の連絡先も、美容学校の時に携帯をなくした際、どこかへ消えてしまったな。ごめんね。
なのに僕としては馴れ馴れしくも友人と呼んでいいのか?という疑問に関しては、うん。
向こうはどう思っているか知らないけど、今でも数少ない高校の友人だと思っています。僕はね。
高校の時に多少ながら音楽をかじっていてバンドを組んでいた(といってもコピーバンド)僕は、彼女とは音楽の部分でどこか繋がっていて、
学校ではすれ違えば挨拶するくらい。でも学校の外のライブハウス等ではよく顔を合わせて、音楽を通じてなんとなく気があった。(と僕は思っているよ)
僕は何かその時の繋がりみたいなものを今でも感じていて。
多分、彼女の持っている世界観というものが僕は好きなんだと思う。
彼女は結婚をしていて子供もいるし、誤解のない様に書いておくけど、「好き」と書いたけどこれは恋愛感情というのでなく、「人」としての部分。
今は僕は上京していて実際に会うこともなくて、SNSでしか繋がってないけど、「人を惹き付ける才能」みたいなものがない僕は、彼女の書く記事に見事に惹き付けられてしまう。ズルイなぁ。
当たり前かも知れないけど、人の世界観というものは、その人しか出せないものと僕は思っていて。
文章を書くことがいくら上手くても、その人の人生経験から成りたつ世界観というものは唯一無二なもので、いくら真似しようと思ってもなんか違うし、響かない。パクリブログなんて見ていて面白くないよ。
正直、僕もブログを書いていて、文を書く事に関してはある程度の経験があるけれども、到底及ばないな。引き込まれるね。
羨ましいくらいだけど、僕は彼女みたいな文を書くことはできないし、自分自身の事を書くしか出来ないし、それでいいんだ。その世界を見る楽しみっていうのもあるからね。
そんな彼女も今は地元にいるみたいなので、僕が彼女の事をここでどんなに褒めて書いても、そこには何も商業的なものは発生しないよ。
でも彼女のSNSの投稿にこうして触発されてこの記事を書かずにいられないのは、
単純に僕は友人として彼女がそういう価値観を持ってしまっている事が、美容師の僕としてはとても残念だなと思ったのと、
今の僕にはその頃の高校の「友人」としての立場とは違った「美容師」としての僕から伝えたい事があるからなんだよね。
「お客様は神様」じゃなくて「ひとりの人間」だよ
「お客様は神様です」という、昔ながら言われている事に関して、僕は思うことがあって
誤解を恐れずに書くと僕は「お客様は神様じゃない」と思ってる。
「技術職」でも「サービス業」でも「接客業」でもある「美容師」という仕事をしている僕にとって、
そもそもこういう仕事は「お客様がいなくては成り立たない仕事」なので、とても特別な存在な事は変わりないんだよ。
だけど、「お客様は神様じゃない」と思う理由を書くとすると、
元々この「お客様は神様です」という言葉は、
「舞台に立つ時には、敬虔な心で神に手を合わせたときと同様に、心を昇華しなければ真実の藝は出来ない」
というのが本来の意味だといいます。多分、時間が経って本来の意味と多少曲がって伝わってる気がするね。
それでも特別な存在という意味では「神様」の様に大事に大事に接する事に関しては間違っていないとも思います。
だけど、結局僕は「人間」であって、対するお客様も「人間」ですから。
お金を貰う払うや施術されるされない等の立場の差はあったとしても結局人として差はないとも思ってる。その方が親身になれるからね。
「人間」は「神様」のように万能でもないし、前と言う事も変われば心変わりもするし、年とれば悩みも増えるし色々ね。
だからこそ人それぞれの味があって、ひとりひとりの悩みがあって、それぞれの人生ドラマも生まれる。
美容室というのはそういうところでもあるんだよね。
だから僕は「美容師」と「お客様」っていう立場としての差はあっても、「人間」としては対等な存在だと思っています。
そして「美容師」な僕としてはお客様が大切な事は変わりない。だけど、お客様が言う事をなんでも聞く事が僕の仕事ではないし、それで満足して貰えるとも思っていません。
お客様のいいなりにならいくらだって成れるけど、それで本当にお客様が喜ぶとは僕は思わないんだ。
僕はプロの美容師だからね。これでなんとかご飯食べてるからね。だからこれから大事な事をいうよ。
「ひとりの人間」と「ひとりの人間」として「対話」をする事
美容師の仕事の中には、主にサロンワークでは「髪を切ること」や「髪を染めること」等の「ヘアスタイルを作る」という仕事があり、
それを毎日沢山のお客様を担当する為には「段取り良く作業をすすめる」という仕事があります。(撮影や作品撮りは今回省きますね)
でも、美容師が仕事が出来るようになるようには「早くヘアスタイルを切れる様にする」とか、
「早くヘアカラーを塗れる様にする」というのは作り手側の独りよがりな仕事でしかなくて
この仕事をするうえで見失ってはいけない大事なことは
【いいヘアスタイルかどうかを決めるのはお客様であって美容師ではない】
ということ。(僕が思うことだよ。)
作り手である美容師が、対するお客様の事を何も知らないまま、ウィッグを切るようにハサミを入れてはいけなくて、
そしてその上で「ヘアスタイルを作ること」=作業というのを仕事の目的としているうちは
美容師はいつまで経ってもお客様にとっての「いいヘアスタイル」は作れないんじゃないかな。
ではどこを目的としてヘアスタイルを作ればいいのかというと
【お客様に喜んでもらう事】だね。それしかないよ。
その目的さえも持たずにいくらハサミを振っても、いつまでも美容師の腕はあがらないままで、
逆に考えればそれを心の中心にしっかりと据えていれば、例え長年ハサミを握らずとも、何歳になっても美容師としてスキルは衰えたとしても、美容師として必要としてくれる人はいるんだろうな。
(その気持ちがあれば自然に前のスキルも戻るし新しいスキルついてくるからね)
そして、それは前に書いたように「お客様は神様」だというのを双方が思ってしまうならば難しくて、
お客様の言う事すべて、なんでも言う事を聞いているだけでは、とてもそこにたどり着けなくて、
作り手側の一方的な価値観の押し付けではもちろん成り立たなくて、
お客様にとっていいヘアスタイルというものは
「ひとりの人間とひとりの人間との対話」
のうえで成り立つものなのかなと。最近思っていることなんだけどね。
人と人としてしっかり話をして、相手の事をよく知って、自分の話もちょっとしたりなんかして、正直に誠実に。
大切な人として思いやりをもって「対話」をする事で人と人の溝を埋めていく様なもの。
例えばそれは時間がかかるかも知れないし、1度や2度じゃ無理かも知れない。嫌な思いをしたり、過去のトラウマを抱える人だって沢山いるんだから。うん、分かってる。
そう思っていて仕事していたとしても、人を喜ばせる事って簡単な事じゃないんだって幾度となく感じてるよ。だから僕は他の部分は全部捨ててでもそういう部分にだって向き合っていくって決めたんだ。だからパーソナル美容師になったんだよね。
いいヘアスタイルってのは、黙って鏡の前で座ってたら1人で勝手に出来あがるもんじゃなくて、美容師に丸投げしたらはいどうぞ〜って作ってくれるもんでもなくて、美容師とお客様と一緒になって作っていくものだと思ってる。そういったパーソナルな部分も含めてね。
そういう人に私は成りたいね。(願望)
大切な人が笑顔で喜ぶ姿が見たくて仕事してる人がいるからさ
きっとそういう「人」と「人」の対話の先には色んな「ドラマ」が待っていて、
その「ドラマ」を僕たち美容師は自分の手で作ることが出来る仕事で、美容室はそのドラマの舞台になることが沢山あって、
僕がお客様と一緒にヘアスタイルを作ることで色んな人の悩みを解決したり、元気になったり、
僕がお客様と一緒にヘアスタイルを変えることでその人の人生が変わったり、前向きになったり、
もちろん僕は美容師としてはプロだけど一流といえないかも知れないし、美容師でも僕が出来ない事も沢山あるけれど、
いいヘアスタイルを作ろうとした時にはその先にお客様の笑顔が喜ぶ姿が思い浮かんで、
お客様が笑顔で喜んでくれた時に僕は初めて笑顔になれる気がします。こんな僕でも役に立てたなぁって、ありがとうって思うよ。
僕の美容師をやってヘアスタイルを作っていく「目的」はそこで、「ゴール」もそこ。
笑顔になって貰えたらなんでもいい気がします。もちろん常識というものはあるけれどね。
こんな事書いといてなんだけど、もちろん美容師の中で自分が1番だなんて思ってもいないし、僕より高い技術力を持っている美容師さんも山ほどいるし、尊敬する美容師さんも沢山いて、上を見たらきりがないけど、
沢山の人に支持されたり一流の人はきっとそうやって色んな人を笑顔にしてる。(はず)
その一流の人達が世の中に送り出してきた沢山の人の笑顔に数で比べたら負けるだろうけど、
大切な仲間やお客様の喜ぶ姿を1番近くで見れる事の喜びは誰にだって変わりないね。大切な人が笑顔になれるのが僕の喜びだから。
逆に大切な仲間や友人が悲しい事は、僕も悲しい思いをする。なんとかならないかなと僕もモヤモヤするよ。
だけど、世の中には僕みたいに「お客様に喜んで貰いたい」って思って仕事してる美容師さんが沢山いる。捨てたもんじゃないよ。
どうやったら喜んで貰えるか、どうやったら最高の笑顔を引き出せるかって、皆昼夜必死になってる。少なくとも僕のまわりの美容師さんたちはね。
自分で探すのは難しいかも知れないけど、見つけるのは大変だろうけど、そういう美容師が沢山いるんだよ。そうじゃない人もいるかも知れないけど、そんな奴は美容師というより人としての魅力がないからすぐ分かるでしょ。
だから、どうか自分に合う美容師さんと、美容室に出会える事を願ってます。心からね。
一度嫌いになってしまったものを、また好きになるのは難しいのは僕も分かるんだけどさ、どうかまた髪を切ることを、美容室に行くことを好きになって貰える日が来る事を願ってるよ。
うん、そのうち東京にくればいいよ、僕のところへおいで〜
それでは。
岡田彰大


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